ギャンブルで職場のストレスを解消できるの?(あるギャンブル依存症な男:Mクンの日常 その六)
毎週土日には、ほぼ徹夜で麻雀をする生活。Mクンがこういう生活を始めて、およ
そ4年が過ぎようとしていた。
Mクンも、こういう生活ではいけない、と思いつつも、麻雀にプライベートの時間
を大幅に使うことが、だんだん自分の肉体と精神を蝕んでいくとは思ってもいなかっ
た。
疲れを感じることはあるが、そういうときは、自分に対してこう言い訳をしていた。
「まだ20代だし、これまでほぼ体力面での影響は感じないしね。さすがに徹夜する
と多少は疲れるし、ふらふらする時もあるし、目がちかちかする時もあるけど、仕事
をしている時は、そういう疲れはあまり感じないし、まだ若いから大丈夫だって。」
・・・しかし、もう30歳を手前に迎えるようになってきて、だんだん仕事にまで
徹夜麻雀が悪影響を与えるようになってきた。
Mクンが以前勤務していた職種は、MRという医療用医薬品営業の仕事だ。(第1
号で書きましたが)
医療関係の仕事でもあるので、医学、薬学などの知識が比較的問われる仕事だ。
営業職ではあるが、PCを使った書類作成などの仕事も非常に多い。
だんだん、この書類作成の仕事が億劫になり、提出期限に間に合わなかったり、作
成した書類にミスが目立つようになり、それを社内で咎められることが多くなったの
だ。
とはいえ、もともとMクンはこういうミスは多い人間だ。
自慢じゃないが小学校のときから、常に忘れものキングだし、部屋の整理整頓も苦
手なので、ものを紛失することもしょっちゅうだ。
ちょっと前に、「片付けられない女たち」という本がベストセラーになったが、あ
れにかなり当てはまる。この本で紹介されているのは、ADHDという発達障害だ。
(ADHDについて知りたい人は、この説明を読んでみてください。wikipediaでの
ADHDの説明ページです。
http://tinyurl.com/29t6nw
)
今でも、私(Mクン)はかなりの確率でADHDの可能性が高いな、と思っている。
だから、最近ミスが多くなってきたな、と思っても、麻雀のせいではなく、自分の
こういう危なっかしさが原因だ、と思っていた。
直属の上司は、あと数年で定年の、おじいちゃんだ。Mクンのこういうミスが多い
ところに対し、叱ったりすることはあるものの、営業成績は結構上げていたし、比較
的勉強をしていて知識も豊富なMクンなので、「まあ、こういうやつだから」的な目
で、大目に見ていた。
そういう上司の甘やかしに対し、Mクンは甘えていたところもあった。
営業に必要な書類、得意先に訪問する時に必要な準備には手を抜くことはないが、
会社が社員の管理のために提出を求めてくる、社内の書類とか、そういうものが馬鹿
馬鹿しく感じてならない。
社員を会社が管理するための書類に、なんで自分の貴重な時間を週に何時間も費や
さねばならないのか。数字(営業成績)出してんだからいーじゃねーか!
しかし、あるときから、そういう甘えが通用しなくなった。
Mクンの勤務していた営業所に、キャリア10年のある先輩が転勤してきたためだ
。仕事上でのミスが少ないタイプの、几帳面な人だった。
ミスが多いMクンは、その先輩(A先輩としておこう)に目を付けられるようにな
った。
社内では、他の社員の面前で激しく叱責される。ミスを見つけては、マイナスポイ
ントを追加される。
何度めかの叱責ののち、A先輩は、営業所内にあるルールを作った。
「ミス(=ペナルティー)が5回以上累積したら、営業所の社員8人全員にメシを
おごる」というものだ。
こういうルールが作られてしまったのには訳がある。
実はA先輩と入れ替わりで転勤していったB先輩が、ミスの多いMクンに対し、「
お前ちょっとミスが多いから、みんなにお詫びにメシでもおごったら?」と言われ、
半ば強制的に奢らされたことがあった。
その時、A先輩はB先輩と入れ替わりで転勤することが決まり、B先輩が異動する
より一足早くMクンが勤務する営業所に入ってきていて、その食事会に参加したのだ
。一応、A先輩の歓迎会と、B先輩のお別れ会を兼ねた食事会、ということになった
。
Mクンは、高級中華料理店に予約することを強制され、9人の社員に対し総額6万
円の食事を奢る羽目になってしまった。
・・・いま思えば、A先輩、このときに味をしめたのか?
・・・いやいや、A先輩の言う通り、「俺がこういうルール作ったんじゃなくて、
もともとあったルールだ」ということにしておこうか。
Mクンは、A先輩にこれほどまでに怒られるのは、自分のミスが多いのが原因だ、
ということは自覚していたので、さすがに麻雀の回数もしばらく減らして、これから
はきっちり書類作成しなきゃ、と思った。
時々平日にも雀荘に行っていたが、平日に雀荘に行くのはやめた。
徹夜麻雀も止めた。
・・・とはいえ、土日に雀荘に通うこと自体は辞められなかったが。
いや、やめようと思えば辞められたのかも知れない。だけど辞めなかった。
大好きな麻雀を、取り上げられたくなかったのだ。
平日の朝、5時起きするようになり、会社の書類作成に精を出した。何しろ、目を
つけられているMクンには、A先輩の事細かいチェックが入り、ちょっとしたミスで
もペナルティーを付けられてしまう。
努力の結果、提出書類の遅れなどの大きなミスはなかったものの、ちょっとしたミ
ス(とMクンが思っているれっきとしたミス。忘れ物とか)は、小学校の時からの筋
金入りのうっかり者なだけに、なかなか改善できなかった。
2ケ月後、ゴールデンウイークに差し掛かろうという頃には、じわじわとA先輩に
より付けられたペナルティーは増え、ぺナ4となっていた。
そのままゴールデンウィークに突入。9連休という長い連休に入った。
Mクンは、解放感でいっぱいだった。
とにかく、この解放感を存分に楽しみたかった。
遠距離恋愛していた彼女も、この連休を利用してMクンの所にやってくる。
(旅費は僕持ちだが。)
彼女の都合により、4日間だけの滞在であったが、2人でいろいろな場所を観光し
、存分に楽しんだ。
彼女も、Mクンとの別れを惜しみながら、満足して帰っていった。
・・・そして残る5日、Mクンはそれまで抑えていた反動で、麻雀に明け暮れた。
2ケ月間の職場でのストレスを、このゴールデンウィークの期間で、存分に晴らし
たかった。
5日間、毎日麻雀。平均睡眠時間、1〜2時間。
ストレスによる反動で麻雀に没頭したことで、そのあととんでもない事態になることも知らずに。
(あるギャンブル依存症な男:Mクンの日常 その七に続く)
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